メルキスです。
日頃は積極的なオンライン対戦及び、オフラインのゲームにおける3密の回避のご協力ありがとうございます。1日でも早い収束を心から祈っています。
今回はDMEDHのルールを管理している時の考え方について記述します。
その中でもゲームの面白さや、いわゆる「ゲーム性」と呼ばれる、ゲームを設計する時のコアな部分について掘り下げていきます。
目次
■ゲームの面白さ
■相互作用
■駆け引き
■入力と出力
■強力な出力への相互作用
■最後に
■ゲームの面白さ
ゲーム、ひいては遊びと面白さの本質とは何か、というのは多くの研究者や開発者によって議論されているテーマです。
その中でも学習やスポーツなど多岐にわたって応用されているものに心理学者チクセントミハイが提唱した「フロー理論」があります。
スライドのグラフはフロー理論をきわめて簡略化したもので、慨すると「ゲームの面白さとは、自身の理解度に対して適切な難易度に挑戦する時のフロー(没入)状態のこと」と言えます。
(スライドのものは本当に簡単に書いているので、フロー理論について詳しく知りたい方は調べてみてください)
理解度に対する適切な難易度への挑戦というのは、初心者にとって複雑なギミックは手に余り、上級者にとって簡単なギミックは物足りなく感じる、といったことです。
そしてDMEDHはDMのルールをベースにして、様々な追加のルールで複雑にしたゲームであるので、ある程度の理解度を持ったプレイヤーを対象にしています。
複雑さが面白さに繋がると書きましたが、単にややこしくすれば良いというものではありません。
例外的な処理や、滅多に使用されないルールなど、ただ煩雑なだけのものは、むしろ接触的にゲームから取り除かなければなりません。
具体例を挙げると、かつて存在していた超次元統率者ルールあたりが該当します。
そして、面白さに繋がる複雑さというのは「相互作用」と、「駆け引き」の2つに大別され、この2つを合わせたものがいわゆる「ゲーム性」と呼ばれています。
■相互作用
相互作用というのは、ゲームの要素と要素の組み合わせによって出力されるポイントのことであり、TCGでは「プレイヤーとカード」「カードとカード」「プレイヤーとプレイヤー」の3種類に分けられます。
「プレイヤーとカード」は、かっこいいクリーチャーを召喚する、面白いカードを使うといった、最も直感的な相互作用です。コンセプトのあるデッキを組んだり、そもそもTCGを遊ぶことへの根源的な動機に繋がります。
美麗なイラストや味わい深いフレーバー、そして遊んでみたくなるようなテキストがあると高まり、DMEDHでは元々のDMのデザインと統率者のフレーバーに殆ど依存しています。
「カードとカード」は、カード同士の組み合わせで得られるシナジーやコンボといったもので、デッキを構築するという行為は、これを高める動きと言えます。
この相互作用は高めすぎると無限ループや即死コンボといった開発者が予期しなかったようなポイントが増加し、後述するプレイヤー同士の相互作用が失われる原因になったりします。
「プレイヤーとプレイヤー」は、相手に対する攻撃や妨害、それに対する防御や反撃といった対戦における対話やコミニュケーションのことを指します。
これは前述のコンボや各種ロックなど、他の要素によって失われやすいものなので、ゲームを管理するうえで失われないように調整しています。
この3種の相互作用をそれぞれ高めることが、ゲームの複雑さ、面白さに繋がります。
ここで重要なのは、ゲームに参加しているすべてのプレイヤーの視点で考えることであり、また、3種類すべてが総合的に高くなるように設計することです。
そのため、この3種の相互作用が高められるようなゲーム作りを行っています。
具体的には、面白いカードや普段使えないようなカードを使えるようにしたり、2度撃ち禁止ルールを採用してカード同士の相互作用は高めつつプレイヤー同士の相互作用を失わせにくいチェインコンボを狙うようにしたり、その思惑から外れてプレイヤー同士の相互作用を失わせるような過剰なソリティアやロックを規制したりしています。
■駆け引き
駆け引きとは「リスク」と「リワード(リターンとも)」の釣り合いのことです。
「リスク」とはある行動を選択する・しないことへの代償で、相手からの妨害だったり、そもそもその選択した戦術が成立するのかという難易度が当たります。
「リワード」とはその行動を選択した・しなかったことに得られる報酬で、相手への打撃やゲームの目的達成(に近づく)などが挙げられます。
多くのプレイヤーにはリスクを最小化し、リワードを最大化しようと行動します。
幾つかの選択肢のうち、リスクに対してリワードが極端に高い選択肢があると、その選択肢だけが選ばれ続けて他の選択肢は選ばれなくなってしまいます。
それが起こるとゲームの複雑さは失われ、面白くなくなってしまうので、そうならないように極端にリスクとリワードのバランスを崩す要素を無くすようにしています。
このリスクとリワードのバランス取りによる駆け引きの担保は、「5文明の強弱(自然文明偏重の解消など)」「多色デッキと単色デッキ」「同じ色の中での統率者の選択肢」「キルターン」「運要素」など、さまざまな視点・対立軸から検討されています。
■入力と出力
リスクとリワードの駆け引きをカードや戦術単位まで落とし込むと、「入力」と「出力」という概念となります。
「出力」とはゲームを決める(あるいは進行させる)ためのカードや戦術のことであり、リワードに当たります。
「入力」とはマナブーストやコスト踏み倒しといった出力を行うためのエンジンのことであり、リスクに当たります。
ゲームを一気に決められる強力な出力が選択肢にある(リワード過大)と、誰が先に出力できるかがそのままゲームの勝敗に直結するいわゆるブン回りゲーとなります。
逆に簡単にマナが溜まったり大量にカードを踏み倒すことが選択肢にある(リスク過小)と、デッキの再現性が上がり過ぎて、毎回同じようなゲーム展開になってしまいます。
総じて、入力も出力も強すぎるカードが選択肢として残るとゲームから複雑さと面白さが失われてしまいます。
そのため、ゲームの面白さを担保するためには、リスクに対して極端に高いリワードを得られないように、入力と出力を調整する必要があります。
簡単に行える行動には小さい成果を、決めるのが難しい行動には大きな成果を得られるようにすれば、駆け引きが高まり、選択肢の多様性が生まれ、それがゲーム性と呼ばれる面白さに繋がります。
■強力な出力への相互作用
デュエマにおいて、強力な出力には出力するために攻撃を必要とするものと、必要としないものに分けられます。
攻撃を必要とするものは、無限アタックや大打点、大量ブレイクなどがあります。
攻撃を必要としないものは、エクストラウィンをはじめ、無限ループや即死コンボ、大量ランデスや完全ロック、エクストラターンなどがあります。
攻撃を必要とする出力に対しては、出力される側のプレイヤーにはシノビ、トリガーなど多くの対策があり、出力する側にもハンデスやシールド焼却といった更なる対策があるため、これらの要素の相互作用が駆け引きとして機能します。
これに対して攻撃を必要としない出力では、防御側の対策が妨害システムなど、攻撃を必要とする出力に比べて極めて限定的な手段しかなく、そのため容易に突破されてしまいます。
このため強力な出力に対する最大の対策は、こちら側が先に出力することになりがちです。
また、攻撃が絡む出力は(無限アタックは別として)対戦相手が増えれば攻撃と防御の駆け引きはより複雑になり、多人数戦の面白さに繋がります。
対して攻撃が絡まない出力は対戦相手が何人いても出力されると同じ結果になるため、多人数で行う意義がありません。(裏を返せば、1対1で行うメガデッキなどでは選択肢として残せると言えます)
このため、攻撃を必要とするものと必要としないものでは規制を検討する際に扱いが変わってきます。
また、クリーチャーや呪文をロックするカードは、攻撃を必要とする出力を必要としない出力と同等に引き上げてしまう恐れがあるため、これらは常に規制が検討されています。
しかしながら、規制し過ぎてしまうとトリガー偏重の徹底的に引き籠るタイプのデッキが突破できず、対戦時間が極端に長くなるという別の問題も発生するので、慎重な扱いが要求されます。
■最後に
今回はルール作りについて少し突っ込んだ内容となりました。
こういう記事は書いて欲しいと言われる割にはフィードバックが殆ど無いので、感想などを書いていただけると、今後の記事とルール作りに活かせるので、是非共有をお願いします。